マイボーム腺機能不全治療について
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マイボーム腺という油を分泌する腺が下図のように瞼の中にあり、瞼の縁には油を分泌する開口部がたくさんあります。ここから目の表面に分泌された油があることで涙は蒸発しにくくなり、乾いてしまうことはないのです。
最近『マイボーム腺機能不全』という病気が注目されていますが、これはマイボーム腺が詰まって油が分泌できなくなる状態です。あまり聞き慣れない病気ですが、実は非常に多くの方がマイボーム腺機能不全を患っていると考えられています。
マイボーム腺機能不全になると涙が乾きやすくなるため、ドライアイになります。涙の水成分は十分出ているのに目が乾きやすいという方は、このマイボーム腺機能不全かもしれません。また、加齢とともに起こりやすくなりますが、コンタクトレンズの装用や長時間のパソコン作業も影響すると言われており、多くの方は目の不快感や乾燥感を訴えられます。
名古屋アイクリニックでは、マイボーム腺機能不全の診断から治療まで一貫して取り組んでいます。
検査ではマイボグラフィーという機器を使ってどの程度マイボーム腺の腺構造が保たれているかを確認し、診察では外来の顕微鏡でマイボーム腺の開口部を観察し、圧迫して分泌の状態を確認します。
下の写真は上瞼と下瞼の中のマイボーム腺をマイボグラフィーで撮影した写真です(白くシマシマに見えるのがマイボーム腺です)。
さらに最近導入したLipiviewという器機を使用し、実際に目の表面の涙の中の油層の厚みを測定します。この検査は診断だけでなく、治療前後の状態を比較するためにも行っています。
さて、マイボーム腺機能不全の治療ですが、マイボーム腺の開口部は瞼の縁にあり、非常に汚れが溜まりやすい場所です。特に女性はお化粧などの影響も非常に受けやすい場所です。感染が関与しているような場合は抗生剤の軟膏を瞼の縁に塗ることもありますが、一番大切なことは、普段から瞼の縁を清潔に保つことです。下の写真はマイボーム腺機能不全とともに眼瞼縁が炎症を起こしている写真です。
最近発売された、アイシャンプーという商品はまさに画期的です。今までは外来で、うえの写真のようにマイボーム腺周囲がよごれていて、マイボーム腺が詰まっている患者さんには、まずベビーシャンプーで目の縁を洗うように指導していました。しかし、自分でも試しましたが目にしみてしまい、なかなか継続できるようなものではありませんでした。
このアイシャンプーは涙に近い成分でできているので全然しみなくて、非常に使いやすいです。また最近は女性を意識した睫毛の美容成分も含まれているというから驚きです。名古屋アイクリニックでは患者さんに合わせて2種類のアイシャンプーを用意しています。
感染が関与していないマイボーム腺機能不全では、昔ながらの瞼を温める治療が有効です。これは詰まった油は融点(溶ける温度)が高くなっているため、通常の温度では溶けにくいからです。瞼を温めるには下の写真のような花王から発売されているホットアイマスクや、繰り返し使える「あずきのチカラ」などがあります。
名古屋アイクリニックでは瞼を温めてから、マイボーム腺圧迫セッシというもので、詰まった油を絞り出すようにして取り除きます。ただし、このままではまた詰まってしまうことが多いので、自宅でのセルフケアも重要です。そのため、マイボローラーを作成し患者さんにお渡しし、これを使って自宅でも温めた後のマッサージを継続していただきます。実はこのローラーは、マイボーム腺が詰まって困っている当院の患者さんが考案されたものを、当院のお母さんのようなスタッフが一つずつ手作りしています。もう少しおしゃれ感があると良いと思いますので、どこか製作していただける会社があればご連絡いただけると幸いです。